多摩「教育」読者の会7月例会のご案内
6月例会の参加者は7名でした。
議論は第一特集「学校と地域の新しい関係」から始まりました。論文にあるような学校と地域の関係が羨ましいという声に対し、学校も地域も互いに相手に依存せざるをえない苦境の表れではないか、という解釈が出されました。ついで、過疎地では全国から生徒を募集している事例が増えているという話が出ましたが、生徒募集に成功している事例もあるが、多くの後発事例では思うように人が集まっていないことや、高橋論文にあるように町村民により支えられている事例がある一方で、トップダウンで全国募集が決まり、民間のマーケティングノウハウを活用して学校改革を進めている事例もある、といった話が出ました。また町村立高校は、都道府県が統廃合を進めようとする中、市町村が維持運営を引き取っている場合があること、そのため地域の衰退を示す指標でもあること、などが指摘されました。そして必ずしも財政的に余裕があるはずがない町村で、下宿費補助金交付制度を設立して、生徒に財政的支援をしていることへの感嘆が疲労されました。今井論文で言及されている高大連携については可能性を期待する声が出る一方で、トップダウンでやってきて内発的に動機づけられていない場合が大半であり、連携先も物理的に交流可能圏にある大学に限られてしまうために活性化する可能性は薄いのではないかという意見も出されました。国や教委からのトップダウンの教育改革については全否定すべきなのかどうか躊躇することもあるという発言があったため、過去の地域教育改革の事例を掘り起こしながら、現場の当事者の内発的動機を生み出すにはどうすればよいのか模索がなされました。
また、山口論文に描かれている離島の教師の姿に対して賞賛がなされる一方で、そうした地域では過酷な残業が少ないはずだという指摘があり、教師の働き方改革を積極的に進める必要があるという主張が出されました。そして教師のサービス残業に追われる姿を不自然だとして、学校管理職のリーダーシップで残業を減らす取り組みを進めるべきだし、教員側もおかしいと声をあげていかないといけないという指摘がなされました。また、そうした勤務実態が生み出されている原因として、部活動の指導や報告書の作成業務、なんでも丸抱えする教員文化などが挙げられましたが、1970年代初めにはそんなに残業が行われていなかった以上、残業文化はある時期から創り出されたものである、という意見も出されました。
第二特集「市場化する学校」については、小池由美子論文が描く、教育産業の介入とそれを受容させられる学校について意見が述べられました。これについては、現在の学校が必要でない行事・業務を抱え込まされているのではないかという意見や、テスト・入試だけでなく、評価システムまでも教育産業が引き受ける事態になってきているが、これは多忙化する中で教員も異を唱えなくなるのではないか、という意が出されました。また、中村文夫論文が指摘する、非正規教員や教育補助職の配置がすすみ、本採用公務員がじっくりと腰を据えて教育に取り組む場ではなくなっているという事実をどう受けとめるべきかという問題提起がなされました。これに対しては、4日前に開かれた第3回全国大会プレ学習会の児美川孝一郎さんの「学習の個別最適化が進む」という分析と重ねる参加者もいました。それでは集団的な教育の機関として学校は何を担うことになるのかという問いが出され、道徳教育ではないかという意見も出されましたが、そんなにきれいに教科学習と道徳教育が二分化するだろうかという疑問も出されました。
7月号の特集は「子どもが決める」「主体として生きられる教師へ」です。6月例会の中で先取りして言及された論文もありますが、権利の主体として子どもが生き、学ぶとはどういくことか、教師が「主体として生きられる」とはどういうことか、改めて議論したいと思います。
期日: 7月25日(木) 18:30~
会場: 一橋大学第一研究館小集会室
西キャンパス正門の正面に見える時計台が図書館です。図書館正面入口を入って右折し、建物の角を道なりに曲がります。渡り廊下を通ってすぐ右にあるのが小集会室です。
〇8月中旬に全国大会が開催されるため、8月例会は休会とします。
〇9月例会は9月26日(木)で、会場は一橋大学職員集会所です。
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