10月例会の参加者は、久々の参加者を5名で、参加者の近況の中から教育を考える作業が中心を占め、私学における宗教教育のあり方などにも話が及びました。
特集1に関連して、生源寺論文が言及しているように、教師の教育内容・方法の自由を行使しようとすると学習指導要領に照らして「不適切」とされてしまうような学習指導要領体制の現実におけるあり方が検討されました。高等教育機関には学習指導要領はありませんが、国家資格の取得を目的とした専修学校では、国家資格に即した教育課程とそれに即した教科書があり、教育内容・教材選定の余地がほとんどないことが紹介されました。国家資格取得率といった数値による競争と目標管理が行われる環境は、進学実績という数値に左右されがちな高等学校との共通点が見だされるといった指摘もありました。大学入試問題は確かに高等学校学習指導要領に即したかたちで作成されています。しかし大学入試を頂点とする受験競争を、子安論文が言及している教科書の広域採択制や日常の授業実践における学習指導要領の制約と同一次元で「学習指導要領体制」の表れとみるかどうかは検討の余地がありそうです。ただし、大学入試における推薦入試枠が拡大している今日、それを理由として高等学校では定期試験や教育内容・進度の共通化が図られているといった指摘もあり、「学習指導要領体制」なるものを多面的にとらえることが大切でしょう。
特集2については、藤原論文で紹介されている「森の時間」・「環境学」・スタディツアーといった実践を高く評価する意見が出されました。学校制度基準としての学習指導要領が定める教科・科目の枠を超えるかたちで設定される教育活動は、教師の専門性の蓄積という点で課題が残るものの、学習指導要領体制をのりこえる教育内容・方法の自由を行使できる機会でもあります。
他方で、SDGsは今日、子どもたちにとっては「学校が語るお題目」として受け止められるようになっている(がゆえに危機感を内面に持つにいたらず、主体的に取り組む対象になっていない)のではないかといった指摘が出されました。また、政策主導者や政権与党が声高に語るものとなっており、SDGsに言及することで地球上の自然的社会的環境を考えているかのような免罪符を与えることになっているのではないか、とかいった指摘もありました。SDGsは必ずしも環境問題だけを扱っているわけではありませんが、環境教育における論争状況などから考えるヒントをいろいろもらえることがありそうです。
11月例会は以下のとおり行います。12月例会も第4木曜(26日)を予定していますが、
1月例会は第5木曜(30日)となる予定です。
日時:11月28日(木) 18:00~20:00
会場:一橋大学第一研究館1F小集会室
https://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html
建物配置図の18番です。12番の図書館(時計台)正面からアクセスしてください。
テキスト:『教育』2024年11月号
(特集「学校の『男性性』を問う」「先生が学校を休むとき」)
事前の出席連絡は不要ですので、ご都合がつく方は気軽にご参加ください。
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